発電ブレーキと身延線
Twitterを眺めていると、「発電ブレーキが付いてない313系8500番台は身延線には入らない。」という趣旨のツイートを目にすることがあります。
身延線や御殿場線などで活躍する313系2600番台には発電ブレーキが搭載されているのに対し、東海道線で活躍する2500番台には同装置が未搭載であることから、このような趣旨に至ったのではないかと推測できます。
ということで、発電ブレーキとは何のためについているのかを解明してみたいと思います。
313系はほぼ全車共通で回生ブレーキを主体とし、不足するブレーキ力を空気ブレーキで補う方式を採用しています。
回生ブレーキをざっくり言うと、電車の動力となるモーターが減速時には発電機になる作用があるので、発電した電力を周囲の電車に回して生かそうって仕組みです。
回生ブレーキは発電した電力を循環させることで使用電力を減らせる反面、発電した電力の消費相手がいないと、ブレーキが効かない状態(回生失効)になるデメリットがあります。
空気ブレーキは名前の通り、車両の空気タンクにある圧縮空気の量を調整し、車輪に制輪子を押しあてることでブレーキ力を得ます。
空気ブレーキは確実なブレーキ力を得られる反面、制輪子を車輪に押し当てるだけに部品が摩耗しやすいというデメリットがあります。
ここまでを見ると、ともにデメリットこそあるものの、身延線に発電ブレーキが必須な理由は見当たりません。
発電ブレーキが搭載されていない8500番台も、代走ながら身延線へは入線しており、身延線に発電ブレーキが必須ではないことがわかります。
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▲2022-04 313系S2編成 身延 身延線に313系8500番台が入った証明として |
となると、身延・御殿場線向けに導入された2600番台の発電ブレーキの存在意義はどこにあるのでしょうか。
そもそも発電ブレーキとはどんな装置なのでしょうか。
発電ブレーキは、電車の動力となるモーターが減速時には発電機になる作用があるので、発電した電力を熱に変換して大気へ放出するシステムです。
電気を熱に変換するのに電力抵抗を噛ませるため、床下に抵抗器があるのが特徴です。
(厳密に言うとブレーキチョッパ制御器もあるのですが今回は省略)
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▲2022-09 313系V8編成 クモハ313-3008 3000番台の写真で代用、明るく画像加工されているのが発電ブレーキ抵抗器 |
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▲2022-09 313系T7編成 鰍沢口 東海道線向けの2500番台も発電ブレーキはないが、身延線への入線実績はある |
回生ブレーキと異なり、ほかに電力を使用する列車がいなくても使えるというメリットがある反面、電力のロスが発生するデメリットがあります。
ただ、身延線のような列車本数の少ない線区では回生失効を減らし、かつ空気ブレーキによる摺動部の摩耗も減らすことが出来ます。
閑散線区での発電ブレーキ装置は、車両保守の面でとても有利であることがわかります。
ここまでの結論から、身延線では発電ブレーキがあると有利でこそあるものの、必須ではないことがわかります。
ここからは余談ですが、鉄道会社によっては変電所に蓄電池を設置し、回生ブレーキで発生した電力を保存、活用することで回生失効を防ぎ、電力ロスを減らす取り組みもあります。
JR東海の在来線にこの装置が導入されているか定かではありませんが、もしこの装置が導入されると、発電ブレーキの有無による運用の区分はなくなる可能性も考えられます。
ちなみに昨年度、中央線へ配置された8両編成の315系は発電ブレーキ未搭載でした。
今年度中には4両編成の315系も登場の予定で、機器配置には何かしらの変更があるとみてよいでしょう。一体どのような変更が加えられるのか、今後も目が離せません。
文中の間違いやご指摘等ありましたら、コメントにてお知らせいただけると幸いです。
今週はこのへんで、ではまた。